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「とりあえず大容量」で選ぶと、たいてい失敗します
ポータブル電源は数万円から20万円を超えるものまであり、防災グッズの中では最も高価な部類です。それだけに「どうせ買うなら大きいものを」と考えたくなりますが、この選び方が一番もったいない結果になります。
理由は単純で、必要な容量は「何を動かしたいか」で決まるからです。スマートフォンと照明だけなら、20万円の機種を買っても宝の持ち腐れになります。逆に冷蔵庫を動かすつもりで小型機を買えば、容量が足りずに役目を果たしません。
この記事では、次の順番で整理します。
- そもそも必要かどうかの判断
- 動かしたい家電から容量を逆算する方法
- 安全性の見分け方(ここを飛ばす記事が多いのですが、最も重要です)
- 条件別のおすすめ機種
そもそも、あなたにポータブル電源は必要か
高額な買い物なので、最初にここを判断します。
必要性が高い人
- 在宅避難を想定している(自宅が無事なら避難所に行かない方針)
- 夏の暑さ・冬の寒さ対策まで考えている(扇風機、電気毛布を使いたい)
- 冷蔵庫の中身を守りたい
- 電気が止まると困る事情がある(医療機器、電動ポンプなど)
- 在宅勤務でパソコンの電源確保が必要
必要性が低い人
- 避難所への避難を想定している(重くて持っていけません)
- 単身世帯で、スマホと明かりが確保できれば十分
- 集合住宅の上階に住んでおり、そもそも停電時は避難する方針
必要性が低い方は、20,000mAhのモバイルバッテリーで十分です。数千円で済み、持ち運びもできます。数万円を投じる前に、まずここを確認してください。
なぜ停電対策全体の中でポータブル電源の優先度が低いのかは、停電対策グッズの記事で優先順位をつけて整理しています。
容量の決め方|動かしたい家電から逆算する
まず「Wh」と「W」の違いを理解する
この2つを混同すると選び間違えます。
| 単位 | 意味 | たとえるなら |
|---|---|---|
| Wh(ワットアワー) | 容量。どれだけ長く使えるか | ガソリンタンクの大きさ |
| W(ワット) | 定格出力。どれだけ強い家電を動かせるか | エンジンの力 |
両方を満たす必要があります。容量が大きくても定格出力が足りなければ、電子レンジは動きません。
主な家電の消費電力
| 家電 | 消費電力の目安 |
|---|---|
| スマートフォン充電 | 約15W |
| LED照明 | 約30W |
| 扇風機 | 約40W |
| テレビ(42型) | 約100W |
| 冷蔵庫(450Lクラス) | 約210W |
| こたつ | 約500W |
| 電気ケトル | 約1,000W |
| ドライヤー(強) | 約1,200W |
| 炊飯器(5.5合炊飯時) | 約1,300W |
| 電子レンジ | 約1,500W |
※実際の消費電力は機種により異なります。お手持ちの家電のラベルをご確認ください。
使用可能時間のざっくり計算
使える時間(h)= 容量(Wh)× 0.8 ÷ 家電の消費電力(W)
0.8を掛けているのは変換ロスを考慮するためです。カタログ上の容量がそのまま使えるわけではありません。
1,000Whの機種の場合:
- 扇風機(40W)→ 約20時間
- 冷蔵庫(210W)→ 約3.8時間(※後述)
- 電子レンジ(1,500W)→ 定格出力が足りなければそもそも動きません
冷蔵庫についての補足:冷蔵庫は常時フルパワーで動くわけではなく、庫内が冷えると休止します。実際の消費は表示より小さくなるため、1,000Wh級で半日〜1日程度が目安になります。ただし機種差が大きいため、確実性を求めるなら余裕を見てください。
容量別の早見表
| 容量 | 価格帯 | できること | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 〜500Wh | 3〜6万円 | スマホ・照明・扇風機 | 単身、最低限の確保 |
| 1,000Wh前後 | 7〜9万円 | 上記+冷蔵庫・電子レンジ | 家庭の防災用として標準的 |
| 2,000Wh以上 | 12〜20万円 | 上記を数日間 | 在宅避難を本格的に想定 |
迷ったら1,000Wh前後が基準になります。ここが「家電も動かせて、価格も現実的」な境界線です。
★最重要:安全性の見分け方
ここが、この記事で最もお伝えしたい部分です。
リチウムイオン電池の事故は増えています
製品評価技術基盤機構(NITE)によると、2021年から2025年までにリチウムイオン電池搭載製品の事故が2,140件報告されています。2020〜2024年の集計では、そのうち約85%が火災事故に発展していました。
そしてポータブル電源の事故は増加傾向にあります。また事故は春から夏にかけて増え、6〜8月にピークを迎えます。まさに台風シーズンに向けて備える時期と重なります。
高価な買い物である以上に、選び方を間違えると火災につながる製品だという前提で選んでください。
購入前に確認すべき3点(NITEが推奨)
NITEは、インターネットでリチウムイオン電池製品を買う際に以下を確認するよう呼びかけています。
- 価格が他製品と比べて極端に安くないか
相場から大きく外れた安さには理由があります。 - 販売事業者は信頼できるか(国内の連絡先があるか)
問題が起きたときに連絡が取れない相手から買わないでください。 - PSEマークの近くに事業者名の記載があるか
PSEマークは電気用品安全法に基づく表示です。マークだけあって事業者名がないものは避けてください。
バッテリーの種類を確認する
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| リン酸鉄リチウムイオン(LiFePO4) | 充放電の寿命が長く、熱に強い傾向。防災用途ならこちらを推奨 |
| 三元系リチウムイオン | 軽量・コンパクトだが、寿命・耐熱性で劣る傾向 |
長期保管して非常時に使うという防災用途の性質上、リン酸鉄(LiFePO4)採用モデルを選んでください。現在の主要メーカーの上位機種はほぼリン酸鉄です。
買った後の管理も安全に直結します
- 3〜6ヶ月に1度は充電する(放置すると劣化し、いざという時に使えません)
- 高温になる場所に置かない(車内、直射日光の当たる場所は避ける)
- 強い衝撃を与えない(内部の電池が損傷すると発煙・発火の原因になります)
- 膨張・異臭・異常な発熱に気づいたら使用を中止する
条件別おすすめポータブル電源
※価格・仕様は2026年8月時点の情報です。変動しますので、購入前に必ず商品ページで最新情報をご確認ください。
【標準】まず基準にしたい1台:Anker Solix C1000 Gen 2(A17635Z1)
- 価格帯:7万円前後
- 容量/定格出力:1,024Wh / 1,550W
- バッテリー:リン酸鉄リチウムイオン
- メリット:1,000Wh級で電子レンジ(約1,500W)も射程に入る出力を確保しながら、この容量帯では価格を抑えられています。Ankerは流通量が多く、サポート窓口も国内にあるため、前述の「販売事業者は信頼できるか」という基準を満たします
- デメリット:重量が10kgを超えます。女性や高齢の方が持って避難するのは現実的ではありません。あくまで在宅避難用と考えてください
- こんな人向け:家庭の防災用として、まず1台を選ぶ方
【大容量】数日間を見込むなら:Jackery ポータブル電源 1500 New(JE-1500D-SG)
- 価格帯:8〜9万円台
- 容量/定格出力:1,536Wh / 2,000W
- バッテリー:リン酸鉄リチウムイオン
- メリット:容量・出力ともに余裕があり、冷蔵庫を1日以上動かすことも視野に入ります。上のC1000との価格差は1〜2万円程度で、容量は1.5倍になります
- デメリット:サイズ・重量がさらに増します。購入前に置き場所を決めておいてください。「買ったものの置き場所がなく押し入れの奥」では、停電時に取り出せません
- こんな人向け:在宅避難を本格的に想定し、夏冬の温度対策まで考えている方
【最大級】長期停電に備えるなら:Anker Solix C2000 Gen 2(A17835Z1)
- 価格帯:12万円台
- 容量/定格出力:2,048Wh / 2,000W
- バッテリー:リン酸鉄リチウムイオン
- メリット:2,000Wh級。2019年の台風15号のような復旧まで1週間を超える停電を想定するなら、この容量帯が選択肢になります
- デメリット:価格が10万円を大きく超えます。この予算があるなら、1,000Wh級+カセットコンロ+非常食+携帯トイレを揃えた方が、生活全体としては安定するケースもあります。電気に一点投資することが最適かは、一度立ち止まって考えてください
- こんな人向け:予算に余裕があり、電力依存度の高い生活をしている方
【小容量】スマホと照明だけで十分な方へ
500Wh未満のクラスは3〜6万円程度で、本体も軽く持ち運びやすくなります。ただしこのクラスは製品の入れ替わりが激しいため、特定機種の推奨は控えます。代わりに、選ぶ基準だけお伝えします。
- リン酸鉄(LiFePO4)採用であること
- PSEマークと事業者名が明記されていること
- 国内にサポート窓口があるメーカーであること
- 相場から極端に安くないこと
この4点を満たしていれば、大きな失敗はしにくくなります。
まとめ|「必要かどうか」から考えてください
ポータブル電源は防災グッズの中で最も高価です。だからこそ、順番を間違えないでください。
- まず「必要な人」に当てはまるか確認する
避難所避難を想定しているなら、20,000mAhのモバイルバッテリーで十分です - 動かしたい家電から容量を逆算する
迷ったら1,000Wh前後が基準 - リン酸鉄・PSEマークと事業者名・国内サポートを確認する
価格の安さだけで選ばない - 買ったら3〜6ヶ月に1度は充電する
放置すると、いざという時に使えません
そして最後に、身も蓋もないことを書きます。
ポータブル電源を買う前に、明かりと情報とトイレを確保してください。10万円のポータブル電源があっても、携帯トイレがなければ被災生活は成り立ちません。優先順位としては、停電対策の基本3点を揃えた後に検討するもの、という位置づけが実態に合っています。
参考にした情報源
- リチウムイオン電池搭載製品の発火事故事例|製品評価技術基盤機構(NITE)(事故件数・火災に至る割合)
- 『夏バテ(夏のバッテリー)』にご用心|NITE(事故の季節傾向・購入時の確認事項)
- リチウムイオン電池使用製品による発火事故に注意しましょう|経済産業省(PSEマーク・取り扱い上の注意)
- 消費電力(アンペア数)が高い家電ランキング|エネチェンジ(家電の消費電力の目安)
- 国内の大規模停電事例|Honda(2019年台風15号の停電規模)
※本記事の情報は2026年8月時点のものです。


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