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その防災リュック、背負って走れますか
防災リュックを作るとき、ほとんどの人が同じ失敗をします。必要そうなものを入れすぎて、重すぎて持ち出せなくなるのです。
一般的に、非常用持ち出し袋の重さの目安は男性で15kg、女性で10kg程度、体重に対しては男性で体重の30%、女性で20%と言われています。
しかし、これは上限であって目標ではありません。実際に必要と言われるものを詰めていくと、成人でもすぐに8〜10kgに達します。そして15kgのリュックを背負って、暗い夜道を、水たまりを避けながら、避難所まで歩けるでしょうか。
本当の基準は「小走りできるか」です。数字の目安を満たしていても、走れなければ意味がありません。
この記事は「あれもこれも入れましょう」というリストではなく、何を諦めるかを考えるための記事です。
大前提:リュックは2つに分けて考える
ここを理解すると、一気に整理できます。
| 一次持ち出し品 | 二次持ち出し品 | |
|---|---|---|
| 目的 | 命を守って逃げる | 避難生活を送る |
| 持ち出すタイミング | 発災直後、すぐ | 落ち着いてから取りに戻る |
| 置き場所 | 玄関・寝室 | 自宅の収納 |
| 重さ | 軽いほど良い | 重くても可 |
多くの人の失敗は、この2つを1つのリュックに詰め込もうとすることです。避難生活3日分の水と食料を背負って逃げる必要はありません。それは後から取りに戻るか、避難所で配給を受けるものです。
一次持ち出し品は「逃げ切るための道具」だけにしてください。
一次持ち出し品|これだけは入れる
命に直結するもの(削れない)
- 飲料水:500ml × 2〜3本(3日分ではありません。逃げる間の分です)
- 常備薬・お薬手帳のコピー:代替がききません。最優先で入れてください
- メガネの予備・コンタクト:見えないと避難行動そのものができません
- ヘッドライトまたは懐中電灯:停電した夜道は本当に何も見えません
- 携帯ラジオ(小型のもの)
- モバイルバッテリー+自分のスマホに合うケーブル
ケーブルの入れ忘れが非常に多いです。バッテリー本体だけ入れて、ケーブルは普段使いのまま——という失敗が起きます。リュック専用のケーブルを1本、入れっぱなしにしてください。
身を守るもの
- 軍手・厚手の手袋:ガラス片・瓦礫から手を守ります
- ホイッスル:声を出すより体力を使わずに助けを呼べます。瓦礫の下では特に重要
- マスク:粉塵対策
- レインコート:傘は風で使えません。両手が空くレインコートを
生活の最低限
- 携帯トイレ:数回分。避難所のトイレはすぐ行列になります
- タオル:1〜2枚
- ウェットティッシュ
- 現金(小銭を多めに):停電でキャッシュレス決済も ATM も使えません。公衆電話用の10円玉も
- 簡単な非常食:エネルギーバー等、火も水も不要なもの
身分・記録
- 身分証・保険証のコピー
- 家族の連絡先を書いた紙:スマホが使えない前提で、紙で持ってください
- 自宅と避難所の位置を書いたメモ
入れがちだけど、見直したいもの
ここが本題です。削る勇気を持ってください。
| よく入れるもの | 見直しの視点 |
|---|---|
| 水2L × 数本 | 重量の大半を占めます。一次持ち出しは500ml数本で十分。3日分は自宅に備蓄し、後から取りに戻る |
| 3日分の非常食 | 同上。避難所では配給もあります |
| 大型ランタン | 重い。ヘッドライトで代用可 |
| 大量の着替え | 1セットで十分。優先度は低い |
| 缶詰(缶切り必要なもの) | 重く、開ける手間もある。プルタブ式を選ぶ |
| 本・娯楽品 | 気持ちは分かりますが、一次持ち出しには不要 |
| 多機能ラジオ(大型) | 手回し機能は重量増になりがち。小型優先 |
判断基準はシンプルです。「これがないと、今夜命に関わるか?」
命に関わらないものは、二次持ち出し品に回してください。
リュック本体の選び方
意外と軽視されますが、リュック自体の重さも積み荷です。
- 容量:一次持ち出しなら20〜30Lで十分。大きいと詰め込みたくなります
- 重さ:本体が軽いものを。1kg違えば、その分だけ中身を入れられます
- 背負いやすさ:胸のベルト(チェストストラップ)があるものを選んでください。走ったときに肩からずり落ちません
- 防水性:雨天での避難を想定。防水でないなら、中身をジップ袋で小分けにする
- 色:暗闇で見つけやすい明るい色、または反射材付きが安全です
価格帯:3,000〜8,000円台。防災セット(中身入り)は8,000〜20,000円台。
「防災セット」は買うべきか
中身が一式揃った市販の防災セットは、「何も持っていない人が、今日ゼロを脱する」には有効です。
ただし注意点があります。
- 中身が自分に最適とは限りません。常備薬もメガネも、セットには入っていません
- 重量が想定より重いことがあります。買ったら必ず一度背負ってください
- 内容の質はピンキリです。中身のリストを確認してから買ってください
おすすめの使い方:セットを土台にして、自分専用のもの(薬・メガネ・ケーブル・現金)を足す。これが最も現実的です。
置き場所と、年1回の見直し
置き場所
- 玄関が基本(逃げる導線上)
- 寝室にも1つあると理想的(夜間の発災に備える)
- 押し入れの奥は最悪です。取り出せません
年1回の点検(防災の日がおすすめ)
- 食品・飲料水の賞味期限
- 乾電池の使用推奨期限
- モバイルバッテリーの残量(自然放電します)
- 常備薬の期限
- 衣類のサイズ(子どもは1年で変わります)
- 実際に背負ってみる
特にモバイルバッテリーは、入れっぱなしだと空になっています。半年に1度は充電してください。
まとめ|足すより、引く
防災リュックづくりで一番大事なのは、背負えることです。
- 一次と二次に分ける(逃げる用と、生活する用)
- 一次持ち出しは軽く。「今夜命に関わるか」で判断する
- 薬・メガネ・ケーブルは代替がきかないので必ず入れる
- 完成したら背負って、小走りしてみる
- 年1回点検する
そして最後に。リュックを作ったら、一度背負って玄関から外に出てみてください。5分で終わります。
「重い」と感じたら、それは減らすべきというサインです。完璧な中身より、実際に持ち出せる重さのほうが、はるかに価値があります。
参考にした情報源
- 災害が起きる前にできること|首相官邸(非常用持ち出しバッグの考え方)
- 非常時の持ち出し品|長岡京市(持ち出し品リスト)
- 防災グッズ一覧|広島県(一次・二次持ち出しの区分)
- その防災リュックの重さ、本当に背負って走れますか?|京都光華大学(重さの目安と実際の運用)
※本記事の情報は2026年8月時点のものです。

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